乗車日記

自転車ときのこ

北摂ラリ−1日目(回想)

出発まで

そもそもの始まりは、金曜日の朝、腹が気持ち悪かったことだった。珍しく朝ご飯が食べられなかった。昼ご飯はなんとか食べたものの、ずっとおなかが気持ち悪く、晩ご飯は食べられなかった。ヤバいと思いつつ、布団に入り、二時半頃起きて準備を整える。まだおなかが気持ち悪い。熱もある。消化器系にくる風邪のようだ。Mさんに家の前まで車で迎えにきてもらい、9号線のコンビニでIさん、Yさんと落ち合って、スタート地点の兵庫県中部にある宿に向かった。

 宿で着替え、地図をもらって、ルートに蛍光ペンで色を塗る。熱のため頭がぼけているのか、1枚目の地図と二枚目の地図がうまくつながらない。Iさんに教えてもらって、やっとつながりが分かった。既にロスト*1している。その後、ラリー主催者Sさんによるルートのブリーフィングが始まる。聞きながら、いろいろと地図に書き込みをする。公称75キロメートルのコースだ。Iさんには、地図を濡らさないためのビニール袋ももらった。これはとても助かった。

スタート〜PC1*2

 9時15分に出発。既に大雨だ。風邪を引いているのに敵わない。宿の前の舗装道路を二キロほど下り、すぐに左折、また二キロほど上る。そこからオフロード。ちょっと上ってから、シングルとダブルの中間ぐらいの道を南に向かって下る。雨で路面はべちゃべちゃ。以前なら怖くてスピードが出せない所だが、ディスクブレーキとマラソンフォーク、そしてチューブレスタイヤのおかげでがんがん下れる。クイズポイントの石碑を確認した後、二人ほど抜いてさらに下る。雨だが楽しい。じきに舗装道路に出た。オフロードを下ったのは二キロほどか。

 地図にある村を確認しつつ、次のオフロードの入り口がある神社に向かう。鳥居をくぐって、オフロードのは入り口を探す。地図では鳥居の南側に道があるようにかいてあったが、実際には北側だった。このような所は、地図を信じていると痛いめに会う。むしろ地形を見て、自然に道ができそうな所を探すのが肝心だ。この場合は小さな山と山の間の谷を探すことで道を見つけることができた。ここの道は500メートルほどだったが、なかなかよい道だった。道を出た所で、第一チェックポイントについた。チェックポイントの人の話では4位らしい。焦って道を見失わないようにという忠告を受けて出発する。

PC1~PC2

 次のオフロードの入り口までは、4〜5キロほど舗装道路を走る。最近手放し運転ができるようになったので、長い舗装区間で地図を入れ替えることができて、大変快適だ。これまではいちいち止まって換えていたので、時間ロスが大きかった。入り口が近くなってきた地点で、カーブの数を数えるナビゲートを開始し、3回目の左カーブにある入り口を簡単に見つけることができた。

 この辺りまでに、既に全身ずぶぬれ。カッパの上下のおかげで胴体や腕や足は大丈夫だが、手袋、靴はじゃぼじゃぼしている。靴は完全防水のゴアテックスのはずだが、大雨だと足首から水が入って意味がない。しかし、風邪は防いでくれるので、手足ともに寒くはない。

 このオフロードの入り口は恐ろしいほどの傾斜の上り。少しのって上ってみるが、とても最後までは無理なので、途中で降りて押し担ぎ。見るといつのまにか廻りに4人ほど競争相手がいる。ここが第二集団のようだ。ペースを会わせつつ担いで上る。風邪のせいか頭がくらくらする。しかし、なんとか遅れないように行く。高度さで200メートルほど担ぎ上げて、頂上についた。

 頂上にはフェンスがあり、そこのテープにクイズポイント*3の答えが書いてあった。そのまま通り過ぎて尾根を北に向かう。なぜかしばらく行った後、他の4人がクイズポイントの答えがないと言い出した。誰も見ていなかったらしい。しょうがないので答えを教えた。その後は希薄な道を探しつつ下って行く。曲がり角のポイントのイノシシのぬた場を見つけるが、頭が動いていないのかまっすぐ下ってしまい、また引き返すはめになった。少し他の人に先行される。その後何処を走ったのかよく覚えていないが、なんとか山を降りて第二チェックポイントについたらしい。

PC2~PC3

 そこから、また二キロほど舗装道路を南下し、ゴルフ場の中を通ってクイズポイントを確認し、また舗装道路を走って小さい山に入る。ここは二年ほど前のラリーで使った所らしいが、まるで覚えていない。まあ無事に山を抜け第3チェックポイントに到着。ここまでのところ大きな間違いをしていない。珍しいことだ。あまり地図を見ないで感覚に頼る方がよいのかもしれない。

PC3~PC4

 すぐに出発し、細かな分岐のある舗装路をナビゲートしながら進む、途中で少し道を間違えたが、大きな学校があったので、すぐに現在位置を確認することができ、コースに戻る。しかし、ここからのオフロードへの入り口の位置が地図上で間違っており、その上よけいな道が沢山あって、変な所に入ってしまった。しばらく上った後に車は行き止まりという看板があり、一緒に入っていた人が「行き止まりの所に神社(次のクイズポイント)がある訳はない」といったので、なるほど、と思い引き返した。そこで、なんとか正規ルートらしき道を見つけた。等高線に沿った道であるのと、方角があっているのとで、確信した。やはりこういう地形感覚を大切にしなければならない。ずんずん進むが、神社がない。おかしいと思いつつもかなり進むとちゃんと神社はあった。少し地図とはずれていたが。

 どうもこの辺りでハンガーノック気味になってきた。朝からゼリー以外は食べていないのだから当たり前と言えばあたりまえだ。既に時刻は1時を過ぎている。しかしおなかが気持ち悪くて、食べ物を受け付けない。道は水平なのだが、雨で濡れて抵抗が大きく、力が抜けた足にとってはとても重く感じる。普通なら抜かされるはずはないのだが、二人ほどに抜かされた。悔しい。途中から下りになってきたので抜き返し、第4チェックポイントについた。この辺りで第3集団から抜け出せたようだ。

PC4~PC5

 すぐに出発する。少し前に第二集団らしき人たちが見える。舗装路を上り始めるが、腹が減って力が入らず、置いて行かれてしまった。あきらめてマイペースで進み、オフロードの入り口があるというバス停の所で、竹やぶを探る。足跡を参考にして、登り口を探し、担いで上る。しかし全身に力が入らない。ふらふらになりつつ上る。しんどくて脂汗がしたたる。何度か足が吊って動けなくなりつつも、高度差で100メートルほどあがって尾根に出る。

 ここから先は道がないというブリーフィングだった。恐ろしいラリーだ。指定された方向に谷を下って行き、倒木だらけの川沿いを担いでいく。もうくらくらだ。間違いなく人生最悪のしんどさだった。本当にあっているのか、と呪いの言葉を吐きつつ、進んで行くと赤い杭が現れた。これが出てくると正解というのが主催者Sさんの説明だ。よかったとほっとするが、それでも倒木が多く、乗れるような道にはなかなかならない。まあ晴れていて、体調が良ければ楽しい道と思われる。その後はよく覚えていないが、ともかく舗装道路まで出ることができた。

 そこから延々と二キロほど舗装道路を西に向かって上って行く。栄養が足りないためか、ここでも足がつる。たいした坂でもないのにインナー/ローでも足が動かせない。しばらく歩いたり、止まったりしてだましつつ、直ってから乗るということを二回ほどやった。さらに、南に折れる交差点の所で自販機を見つけ、大雨の中、ジュースを買って、パンを食べた。まだおなかは気持ちは悪いが、なんとか飲み込む。そして出発。
 
 目標の池をすぐに見つけるが、舗装道路にそって下ってしまう。途中でオフロード入り口がないことに気がつき、引き返す。池のすぐ横のあぜ道のような所を進むべきだったのだ。そこから二回ほど分岐があったが、何となく曲がる方向が分かり、どんどん進んで行くと、次の目標の高圧電線と鉄塔が見えてきた。この辺りでも足がしんどくずっと押していた。いい加減誰か追いついてくれないかなと思いつつ、のろのろ進むのだが、だれも追いついてこない。クイズポイントの鉄塔を見つけ、尾根を下り、最後に恐ろしい階段を下って舗装道路に出た。

 その舗装道路を間違って下ってしまい、すぐに等高線に沿った道でないことに気づき、引き返す。地図とすこし外れた所にオフロードの入り口を発見。そして、舗装路の方向にで後続二名が来ていることを発見。気づかれると自分だけ間違って大損なので、見つからないように体を低くして進む。等高線に沿った林道を延々と進む。3〜4キロはあったのではないだろうか。ひたすらこいですすむが、力がなかなか出ない。クイズポイントの小屋を見つけ、林道の終点から右へ降りる所あたりに近づく。

 ここで地図では三角点の北側を回り込むように道があるのだが、どう探しても道はない。そうこうしているうちに、後続4名ほどが追いついてきた。みんなで探すが道はない。これは地図が嘘なのだろうという結論に達し、三角点の手前で南に回り込む道を進む。途中に何度か分岐があったが、北へ向かう方を選び、みんなで谷に入って行く。この谷も倒木が恐ろしい。本当に大丈夫かと恐ろしくなりつつ、下って行く。下って下って下って、で最後は崖で引き返すということもあり得るのだ。しかし、最後は地図にある川まで出ることができ、これであっていたのだろうという結論になった。

 そこから舗装路を進み、山荘の所で北に担ぎ上げる。この辺りでも力がでなくて引き離される。しかし下りで、いくつか分岐があったのと、下りはまだ速く走れたのとで、なんとか取り返し、第5チェックポイントに入る。9位だったらしい。ここで時間切れで第6チェックポイントへは行けないことになったが、あまりに疲弊していたので、時間切れになってよかったと心底思った。おなかも大分回復していたので、ばくばく食べた。リンゴ酢も飲んだ。たこ焼きがとてもうまかった。

PC5〜宿

 そこに5人ほどで一緒に帰ることになり、宿へ向かって出発した。しかしこれがまたしんどかった。まあ延々と二時間近く上って、一人、二人と切れてゆき、最後には自分も切れてひとりぼっちになった。そして真っ暗の中、もうだめだと何度も思いながら、道が間違っているのではないかと不安になりながら、なんとか走って宿にたどり着いた。Mさん、Yさんも帰って来ていた。Iさんは遭難していた*4が、最後には無事に回収されて帰ってきた。YさんはIさんの車に荷物を置いていたので、なかなか着替えることができず、大変だったようだ。

 今日一日で9時間走った。人生最悪のしんどさだったが、人間はなかなか死なないものだということが分かった。これは大きな収穫だ。そして、その後に入った風呂は最高だった。

二日目に続く。

*1:ロストとはラリー用語で迷って何処にいるのか分からなくなること。

*2:PC:チェックポイントの略、フランス語なのでこういう略号になるらしい。

*3:QP:クイズポイント、山の頂上等のルート上に設定してある。その場に行かないと分からないことを設問してある。答えを次のPCで聞かれる。答えられないと正規ルートを通ってこなかったと見なされ、タイムが加算される。

*4:遭難に備えてツェルトをもってきていたらしい。