乗車日記

自転車ときのこ

10万年の世界経済史下巻 読了

下巻も読み終えた。上巻で既に見えていたが、やはり社会ダーウィニズム的な主張だった。
 本書ではマルサス的均衡状態から産業革命への変化を遺伝的原因で説明している。イギリスで長く続いた土地律速の人口安定時期に、総人口は一定でも内部では経済競争に勝ち残ったものだけが子孫を残せるという状況が繰り返された。そのため、社会の構成員の性質が全体的に変化して、技術革新を継続的に生み出せ、かつ、それを活用できる人間集団が形成されたのが原因であると主張している。
 これが正しいのかどうか判断できるだけの知識は持ち合わせていないが、英国の教会に残された多数の遺言書の分析によって得られた、世帯資産と子孫数の相関データの確度は低くはないと思われる。ただそのデータと結論との直接的関連は十分には示されていない気がする。
 新聞の書評で銃・病原菌・鉄のようなビッグストーリーと書いてあったので、何となく買ってしまったが、意外な系統の本だった。また、本書の主張とは関係ないが、私にとっては経済史を大きく見た場合、産業革命が最大の変曲点であることを、改めて認識できたのがよかった。また産業革命からしばらくたった頃の英国の状況が、技術流出、低賃金国の台頭など、意外に今の日本に似ているのが興味深かった。