乗車日記

自転車ときのこ

ナポレオン戦線従軍記読了

18歳のときにフランス共和国の義勇軍に参加し以後45年も軍歴を重ねたヴィゴ・ルシヨン氏の日記。当時の様子が生々しく伝わり大変に参考になる。
 特に興味深いのがフランス軍の機動力と補給の関係。基本的に町や村が沢山あって、毎晩止まる家と食料を現地で調達できることを前提に移動している。中間管理職は毎日先行して宿の手配をしなくてはならない。このやりかただとイタリアやドイツでは素早く動き回れるが、ポーランドやロシアに行くと、村が少なく無理矢理野営する羽目になり、寒い上に食べるものもなく、動き回るだけでひどく損耗する。しかし、この本からうける印象ではロシア軍、とくにコサック兵はなんだか平気で移動しているようだ。どうなっているのだろうか?今度調べてみたい。
 それからベルナドット将軍が結構いい人のようで驚いた。ナポレオンにスウェーデン王にしてもらったのに裏切ったろくでもないやつと思っていたが、橋を燃やすときに壊して材料に使った家の人に弁償していたり、捕虜になったスウェーデンの士官達を私費で国に返してやったり。
 ところでこの本は18年ぐらい前に一度読んでいるはずだが、断片的にしかおぼえていなかったので、新鮮な気持ちで読めた。再読のきっかけとなったエジプト脱出はクレベール将軍が話をつけて、エジプトから出ていく代わりにイギリスとトルコにフランスまで運んでもらったようだ。しかし3万6千人のうち四分の一しか戻れなかったということだ。
 そもそもこの作者、74回も戦闘に参加して毎回目茶苦茶大変な体験ばかりしているのに、最後まで生き残っているから不思議だ。余程タフでかつ運のよい人だったのだろう。