上記の邦訳タイトルのイメージとは異なり、ナポレオンのエジプト侵略について行った150人の科学者の話である。エジプト遠征の軍事的側面についてはそれなりに知っているが、ついて行った科学者たちのことは聞いたことがあるだけで、詳しくは知らなかった。
軍事行動の支えとして、機械の製造や運河のための測量等々に協力しつつも、精力的にエジプトの動植物や文化や、そして遺跡について研究を進めている様子が良く分かる。考古学そのものの立ち上がりが、この遠征あたりから来ているらしい。また、イスラムの学者とも交流を重ねていたようだ。
それにしても、イギリス海軍に航路を押さえられ、完全にエジプトに孤立して、生きてフランスに帰れるかどうか分からないような状況の中でよく研究を進められたものだ。見習わなくてはならないと思う。
結局ナポレオンのエジプト遠征は軍事的には殆ど意味がなく、多くの人を殺しただけで、この科学者たちの得た知識があったことが救いとなっている。最後にイギリスと講和する際に、研究ノートまでイギリス軍に没収されそうになり、激しく抵抗して守り抜いたようだ。ロゼッタ石は持っていかれてしまったが。。。
この遠征以前にはエジプトはギリシャ・ローマの文献に出てくる遠い世界であり、遠征がなければ、ロゼッタストーンは発見されず、ヒエログリフは謎の魔術的記号のままだったかもしれない。
これらの真摯に調査を行った科学者たちの報告によって古代エジプトの文物がブームになり、その後の古代遺跡の略奪が引き起こされたのは、ある意味悲しいことだが、当然の帰結ともいえる。