乗車日記

自転車ときのこ

文明としての江戸システム 読了

政治史ではなく、人口動態や経済の構成などから見た江戸時代史。特に興味深かったのは税制の歪み、結婚年齢の変化、鎖国前の繭取引、嵯峨の葡萄など。
 中期以降、米以外の商品作物や、工業、商業による付加価値の割合が大きくなっているのに、税金はほぼ米だけにかかっているというアンバランス。徴税システムを発展させることはできなかったのか。武家という理想が足かせになるのか。田沼意次の経済政策に対する高い評価が興味深かった。もっと深く知りたい。
 男性の初婚年齢が18〜19世紀の近畿から東海あたりでは25〜28歳というのも、結構驚いた。もっと早いのかと思っていた。女性の方は18〜24と早く、また出産で死亡する率が高くて大変だったようだ。
 この辺りの細かいデータが宗門人別改帳から掘り起こせるというのも凄いことだ。幕府も吉宗以来6年ごとに全国人口調査をやっていたとのこと。しかし、これでわかるのは武家以外で、宗門人別改も人口調査にもかからない武家の人数はよく分からないというのは何とも間抜けな話だ。
 それから、クローズされた扶養可能人口が一定の空間では、経済的に優位な家からは人口の再生産がなされ、経済的に苦しい家は再生産ができずにだんだん入れ変わって行く。昨年読んだマルサス経済的なイングランド史の分析にあったのと同様な状況であったようだ。大きく違うのは家畜の
利用が少ないこと。産業革命以前のヨーロッパでは畜力を大きな動力原とし、人間の食料と飼葉との競合が生じていたらしい。
 まあ、いろいろとあっただろうが、ともかくこの島でクローズした状態でそこそこの人数が暮らしてきた実績はあるというのは意義深い。今後のことを考える上で、いろいろとヒントになるところもあると改めて思った。
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