乗車日記

自転車ときのこ

進化する魚型ロボットが僕らに教えてくれること 読了

シミュレーションではなくて物理世界でロボットを進化させると予想外のことが起こって面白いのだろうと思って読み始めたが、どうもそういう話しではない。進化アルゴリズムをロボットに実装して世代をすすめるのに四苦八苦して、結構失敗したりするお話だった。各所にちりばめられているスタートレック等のSFネタが結構楽しい。

魚ロボットの動きを解析するのにビデオから人力で軌跡を再現したり、目的関数を適当に決めて後で困ったりと、こんな研究手法で大丈夫かと心配になるが、そこはおもしろおかしく書いているだけなのだろう。

後半は少し面白い。プレシオサウルス型の4つひれのあるロボットを作って、色々試してみたらひれを二つ動かしても四つ動かしても、最高速度は変わらずエネルギーは倍必要という結果が出ている。現生の生物は海亀にしてもアシカにしても、水をかく部分が二つだけというのは、これを反映しているようだ。ただ、四つ同時に使うと停止状態から素早く動き始められると言うことで、プレシオサウルスはそのような動きが必要な生活をしていたと推測されるとのこと。

そして、さらにその後の研究費の出所の話が自分にとっては最も印象深かった。上記の四つひれロボット、波打ち際での行動力に優れていると言うことで海軍研究所から資金が出ているとのこと。また、DARPAのロボットチャレンジコンテストは有名だが、当然、陸上に限らず海中用ロボットに資金を出している。この本の作者、そしてそこで研究する学生達にも、資金の出所に関しては色々葛藤があり、情報の公開という点でその重荷を補償したいと思っているようだ。また、いずれにせよロボットが兵器に使われる流れは止めようもなく、逆にロボットに人間を上回る倫理を組み込んで行ければ、いうのが作者の希望。ナイーブすぎる気もするが。

最初に期待していた内容とは若干はずれていたが、軍事応用に関わるような研究をしている大学の研究者はどういうことを考えているのだろうと不思議に思っていたので、今回意外にもその一端に触れることが出来たのは良かった。

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