乗車日記

自転車ときのこ

中世武士団 読了

武士について知りたくて、最近読んだもう一冊の本。具体的な場所に根ざした調査、分析を基本に据えておられる点にとても魅力を感じた。
まず取り上げられている曾我兄弟の話では、兄弟が親を打たれた後に引き取られた蘇我村の現在の地形、小字、道の様子、寺や神社の位置、等々から当時の様子を再現し、屋形や田畑の位置などを生き生きと描かれていることに感動した。
常陸平氏を取り扱ったところでは、時代を追うにつれてどのように相続が行われ、一族が広がっていったかや、平安時代の郡のそれぞれが、鎌倉末期にはどのように分割されていったかなどがよく分かった。
小早川氏を扱ったところでは、分割相続から、惣領への単独相続に変わっていく様子が、譲状などから明らかにされるところが大変面白かった。
かつて尋ねたことのある越前の一乗谷の章は、大変懐かしい思いがした。
どの章も、それぞれの一族が生きた場所を尋ねて、そこに今も変わらず残る地形などから、昔の様子を読み取るというところが基本となっている。このような読み取りは、少し方向性は違うが、山ラリーでの地図読みに似ていると感じた。山の中の道は昔からの人の生活からできあがっているものが多いので、道を辿るときにかつての人の動きや仕事などを考えることも多い。この本を読んで、普段走り回っている道についてももっと深く知りたくなってきた。

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