乗車日記

自転車ときのこ

異神 上 読了

奥書にある出版年月日は2003年6月10日。たしか出てすぐ買ったのでもう十年以上。新羅明神、赤山明神、摩多羅神。前二つは、京都の東北側が滋賀のあたりを走り回っているとよく目にする名前だし、平家物語太平記あたりにも出てくるので何となく親しみがありますが、最後の摩多羅神は聞いたことも見たこともなく、謎すぎて何度も途中で挫折しました。本日、十年越しでようやく上巻を読み終えました。

 摩多羅神は慈覚大師が引声念仏や阿弥陀如来とともに将来したらしい。「我不崇敬者、不可遂往生素懐」という恐ろしいことが渓嵐拾葉集に書いてあるらしい。これって阿弥陀如来の対偶じゃないのかと思いました。実際、常行堂の念仏行の裏で摩多羅神の行が行われていたとのこと。念仏修行を妨げる天魔を払ってくれるらしい。その作法というのが、跳ね踊り、ランダムにに経を読むというもの。惑乱したかに見せかけて天魔を引きつけ、摩多羅神の力で払う。また玄旨帰命壇の本尊となったのち、邪教として排斥されたり、日光では秀吉の検地と天海による東照宮への移行のあおりで、供養が絶えた後に平成になって再開されたり。

 自分には表面的なことしか理解できていないが、中世の人達の感覚の一端に少しでも触れることができた気がする。夏休みにはゆっくり叡山に登ってみたい気分になった。それから太秦広隆寺でも旧暦の九月にお祭りがあるらしい。そちらも見てみたい。

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