乗車日記

自転車ときのこ

気候変動はなぜ起こるのか 読了

北大西洋で深海に沈み込み、南極まで行ってインド洋を横切り、北太平洋で浮上して、インド洋表層をとおって北大西洋へ。そのような深層と表層で逆向きの海洋大循環のon/offと気候変動の関わりを様々な古記録から検証していく過程を記述した本。最後に将来の気候変動の可能性を少しだけ議論しているが、内容はほぼ過去の気候に関する議論。グリーンランドや南極の氷、カルフォルニアベネズエラ沖の海底にたまった泥、中国の洞窟内の石筍などに残された過去100万年ほどの酸素同位体比やメタンや炭酸ガスなどの記録から、どのように過去の気候変動の様子が解明されてきたかについて詳しく記述されている。
 前世紀の中頃から様々な仮説が提案され、覆り、妥当そうな説明が出てきて、それでもまだ説明しきれないと言った、科学的な議論の発展過程を記述してくれているので、議論の歴史はよく分かるが、その反面、「途中で話が結構変わって混乱する。ただ、科学とはそういうものなので、そのような真摯な姿勢には賛同する。ただ文章は、知っていない人には分かりにくい説明が結構あって、ロジックを掴むのに苦労した部分もあった。このあたりは編集者がもう少し頑張るべき部分だった気がする。
 ところで、過去の気候については余り知らなかった自分にとっては、いろいろな視点に気づかされた。まず気候の変化と言っても、北半球、南半球で同じように変わるわけではないし、高緯度地方と低緯度地方でも違うと言うこと。氷河期、間氷期と言っても地球全体をひとからげにして良いわけではない。また氷や万年雪の量の影響に関しては、反射率の増減による太陽熱吸収の変化や海面の高さの変動に加えて、淡水が急激に加わることによる塩分濃度の変化で、上述の海洋大循環が止ってしまう効果もあるらしい。いずれにしても、複雑な要素がいろいろと絡み合っていて、すでに起こった過去の気候変動を説明するのも結構大変そうだと感じた。ましてや将来予測はは難しそうだが、微妙なバランスの中で状態がスイッチしているようなので、ちょっとした事ですら場合によっては大きな変化をもたらすのだろう。
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