乗車日記

自転車ときのこ

日本巡察記 読了、今週の収穫

Gさんからアマゾンプライムのドラマ、Magi-天正少年遣欧使節-が面白いと聞いて、一気に見てしまったのが先月のこと。ドラマ中の主要人物、使節派遣を企画したイエスズ会ヴァリニャーノ師に大変興味を覚えました。東洋文庫にあるのは分かったので、今回は図書館で借り、本日読了。

そもそも私はイエスズ会の組織をよく分かっていなかったのですが、ヴァリニャーノ師は東インド管区巡察師という東洋布教全体を監査して修正するという非常に重要なポジションの人物でした。日本布教の現状と改善対策の報告書である本書は非常に明晰で論理的。当時のヨーロッパと日本の文化の甚だしい違いを、日本文化に合わせることで、なんとか克服して布教を進めようという姿勢が貫かれていることに驚きました。
相手と自分の地位の違いによっていちいち言葉が変わる日本語、細かく地位に応じて決まっている礼儀作法、肉を食べてはいけないこと、部屋を清潔にしていないといけないこと、婚姻に関する感覚の違いなどなど、ともかく大変だけど合わせるしかないというようなことが述べられています。
日本人は部屋を清潔にしているというのが何回も出てくるのですが、戦国時代の庶民の家がそんなに綺麗なわけはないので、これは寺院のことや領主の館の客間や茶室のことで、それに合わせて教会を綺麗にしておかないといけないということなのだと思います。ただ、当時の日本布教長のカブラル師のテーブルクロスがあまりに汚いので日本人に嫌悪されていたという記述もあり、ずいぶん感覚が違っていたのだと推測されます。
肉食に関しては、教会で牛や豚を飼って、それを殺して食べていたのをかなり非難されていたようです。最終的にはヴァリニャーノ師が、肉食はやめて米と汁だけの日本の食事に合わせる、という規則を裁定するのですが、当時のポルトガル人やイタリア人にとっては大変だったと思います。しかし、肉食の件、最近の鯨を巡る論争の逆写しですね。
また、日本人司祭や修道士を育成して、将来的には任せて行こうとする姿勢も大変好感が持てます。
その他、日本不況の財政面や、初代教会の布教との比較や、信長から秀吉に支配者が変わっていく中での苦境や、イエスズ会内での不協和音などなど、大変読み応えがありました。また解題も当時の状況や他の資料を補いつつ全体像を見せてくれて大変分かりやすいものでした。これを機会に、他の宣教師の文章も読んでみようと思います。

今週の収穫。仕事が大変でストレスが溜まっていたこともあり、買い過ぎてしまいました。

あと、国書刊行会から再販された万川集海を買うかどうか迷い中です。