乗車日記

自転車ときのこ

悪党たちの大英帝国 読了

ヘンリー8世を始めとする七人の王や政治家の人物史を通して、16世紀以降の英国の歴史を切り取った本。少し前に読んだ人物アメリカ史と同様のアプローチと思う。
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私自身は社会全体のシステムとしての発展を語る歴史の方が好みと言えば好みだけれど、やはり人物史は面白い。その時代、階級ごとの日常や、人の感情、会談における会話など、人としての生き死にが見えるのは人物史ならではと言えます。
著者によるとイギリス人は特に伝記が好きとのことで、オックスフォード国民伝記辞典には54922人の評伝が収録され、そのうち10057人については肖像画あるいは写真も掲載されているとのこと。

阿片戦争やアロー号戦争の時の首相であるパーマストンについて読みたくて購入しましたが、チャーチルの伝記が一番面白かった。どうもガリポリの一件があって、第一次世界大戦時のチャーチルには良いイメージがなかったのですが、その後閣僚を首になり、1916年には中佐として部隊を率いて西部戦線で100日ほど戦ったそうです。その辺りの経験がのちの戦車開発を始めとするリーダーシップに活かされているとか。

またボリスジョンソン首相がチャーチルファンで子供の頃からチャーチルの伝記を穴が開くほど読み込み、ついに自分でも評伝を書いてしまったというエピソードも良いです。いわく、大きな経済の流れというようなもので歴史が決まるばかりではなく、一人の人間によって世界の運命が変わりことの反証だと。