乗車日記

自転車ときのこ

平治物語読了

日曜日ぐらいに読み終わったもの。私的にはこの本のテーマは覚悟と読めました。
乱の首謀者の藤原信頼が覚悟のできていない男として徹底的に描かれています。
「鬨の声に驚きて、只今までゆゆしく見えられつる信頼の卿、顔色かはて草の葉のごとくにて、南階をおりられけるが、膝ふるひておりかねたり。・・・・」
「義朝この体を見て、日頃は大将とておそれ給ひけるが、はたと睨みて、『あの信頼という不覚人は、臆したるな』とて、・・・」
この後、信頼は一応馬に乗って待賢門に向かいますが、平重盛に攻められて一瞬で逃げ出します。
さらに戦破れてちりぢりになり、落ちて行くする義朝一向が八瀬で信頼と遭遇したとき、「日本一の不覚人、かかる大事を思ひ立て、一いくさだにせずして、我が身も滅び人をも失ふにこそ。面つれなう物をのたまふものかな。」と鞭で信頼を打ちます。

これに対して、陰の主人公は頼朝のように見えました。若干十三歳で一門として戦い、義朝が落ちてゆくときも馬上で眠ってしまうほどの疲労の中、ついていきます。このような人だからこそ後に平家を滅ぼし鎌倉幕府をつくることができたと暗示しているように読めました。あと武士だけでなく、勧修寺光頼も調子に乗っていた頃の信頼にも全く臆さない堂々たる公卿として描かれていました。平家物語太平記ともに、ほぼろくでもない公卿ばかりでてくるので、このキャラは新鮮でした。
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