乗車日記

自転車ときのこ

森のバロック 読了

粘菌のような動物のような性質も菌類のような性質も示すものを研究していたので、物事の境界を無理矢理にでもはっきりさせる二元論に陥らずに世界観を立てることが出来たという考察が興味深かった。伝承の解釈においても、一つの切り口を当てはめて整理してしまうようなことを嫌い、複雑に絡み合った状況をそのまま読み解く。民族の神話のようなものを作り上げるのではなく、芸術作品を味わうような態度だろうか。森に対する深い思い入れも、同じように森に通う身として深く共感できる。

基本的にこの本は南方熊楠が残したものを、中沢先生が読み解き、完成させようという意図の元に書かれているようだ。自分の今の知識と能力ではそのあたりをきちんと切り分けて理解できない。熊楠に関して最初に読む本としてはちょっと不適切だったかも知れない。まあおかげさまで密教や華厳に関して少し理解が深まったので、良かった面もある。本格的に取り組むにはそちらの知識も手に入れないといけない。

それから補遺の3で説明されていたチベットのロンチェンバのマンダラ理論にある原初認識力が、最近凝っている構成論的な知能へのアプローチにおいて、知能のもととなるものによく似ていると感じた。

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