乗車日記

自転車ときのこ

水中考古学 読了

冒頭、東地中海、青銅器時代の沈没船の臨場感あふれるレポートから始まり、ポーツマス港に沈む15世紀のイギリス戦艦、元寇船、アレクサンドリアの宮殿、宋代の交易船、串本沖に沈むトルコ帝国海軍のエルトゥールル号江差沖に沈む開陽丸、函館戦争に援軍を送るために千葉沖を航行中に沈んだ米国外輪船ハーマン号、などなど大変に興味深い話の連続だった。
外洋を航海するような船は、その母体となった社会を縮小投影した生活空間であり、また貿易品はその経済の凝縮したものでもある。地上の遺跡はポンペイでもない限り、まるっと全部残っているということはないと思うが、海のなかは人が触らないので浸食はあっても意外に保存が良いということを知った。
 韓国新安沖で見つかった元代の交易船からは、日本に向けて輸送中だった銅銭がなんと28トンも見つかったそうだ。この時期、銅銭を作らずに輸入していたとは聞いていたが、まあ確かにこの位の勢いで輸入しないと足りなかったのだろう。
 1628年に沈んで1958年に引き上げられたスウェーデン船バーサ号の話もあった。この船は、以前にストックホルムに行った際に見学したことがある。その時にはその大きさに驚くばかりだったが、今回、引き上げと保存のための処理の大変な努力を知ることができて感慨深い。58年に引き上げて、博物館で展示できるようになったのが88年というから30年もかかっている。
 そういえば、著者の経歴も凄いです。年齢が合わないので調べてみたら、40代まで会社員で、そこから脱サラしてアメリカの大学の水中考古学をやっている研究室に飛び込んだそうです。北畠親房並の胆力ですね。。。
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