乗車日記

自転車ときのこ

古代ローマを知る事典読了

古代ローマを知る事典を読了した。本職の学者が一般向けに書いた本。先日、カルタゴ展に行った時に購入したもの。白い蜘蛛と平行して読んでいた。
文献資料のみに頼って過去を理解することの危険性が強調されていた。

  1. まず書いた人間と異なる時代に生きる我々が過去の文章を読んでも、書いた人が持っていたのと異なるイメージしか浮かばないということ。
  2. 次に、近代的考証学の成立以前には、歴史書であっても何らかの政治的あるいは娯楽的意図をもって脚色されていることが殆どであること。
  3. さらに現代まで伝わっている文献は、中世の人間が古代世界の堕落とキリスト教の優位性を示すために役に立つという理由から選択的に残したものが多いこと。

これらの問題を回避するには歴史時代においても考古学を併用することが 有効なことが各方面で証明されつつあること。この本で紹介されていたグリーンランドの氷の層に含まれる微量の物質から、過去3000年間の銅や鉛の生産量の推移を再現したデータには特に感銘を受けた。それによると1世紀にある鉱物生産量のピークは産業革命まで凌駕されることはなかったそうだ。
いずれにせよ大変興味深い本だった。