乗車日記

自転車ときのこ

インダス文明の謎 読了

 

このシリーズの考古学関係の他の本も何冊か読んでいたので、それらと同様の実証的なデータと考察の本であろうと思って購入した。特にインダス文明については教科書で習った以上の知識が入ってきていないので、最新のデータだともっと色々分かっているのだろうと期待して。

 しかし、インダス文明の解明はまだまだ進んでいないようだ。全体的に考古学の本と言うよりは、遺跡紀行といろいろな説の総論というところ。前半で遺跡を訪ねる話が延々と出てきてちょっと閉口した。インドとパキスタン両国の政治的対立、パキスタンの政情不安、人材不足、インド考古局の情報ため込みなどなど、発掘・解明以前の問題が多々あるということで、そこを分かってもらうのが作者の意図なのだろう。

  モヘンジョダロハラッパー以外にも大都市が3つほど見つかり、さらに小さい遺跡は多数発見され1500kmぐらいにわたる地域で栄えたことは分かってきている。先行研究のエジプトやメソポタミアの方を押し当てたような解釈は、先入観が多すぎるという主張にも納得できる。しかし、著者の唱える説は考古学と言うより民俗学的なアプローチであり、現在のインドの状況からそのまま4000年以上前の過去を類推するようなやり方は、それこそ時間や定量性を無視した根拠が乏しいやり方のように感じた。まあこの本は序論のような感じだったので、地球研から出るという報告書に具体的なデータが載っているのかもしれない。

  それはともかく、インダス文字というのはどうも印章にだけ使われていて、長い文章のようなものは残っていないようだ。たしかにそれでは解読のしようが無いのは頷ける。メソポタミアとの交易はあったようで、くさび形文字の文献にはでているそうだ。まあ少しは分かってきたとはいえ謎ばかり。素人はいろいろ想像が出来て楽しい。

f:id:tasano-kona:20131028224304j:plain