乗車日記

自転車ときのこ

読了、田原坂

読了、田原坂。1973年出版の本(今回購入した増補新版は2018年出版)。昨年の旅行の際に、熊本の長崎長次郎書店で何気なく手に取って購入しましたが、予想を遥かに超える重厚で緻密な本でした。明治十年二月の西南戦争勃発から、熊本城が解放されて西郷軍が人吉に撤収する四月中頃までの戦闘全体が、官軍の視点で記述されています。西郷軍に関しては、ほぼほぼ外から見た動きしか描かれていないので、相手がどう動いているのか分からず、それが恐怖をかき立てます。中隊長以下の士官や兵の記述が厚いのも良いです。病身の著者が最後の力を振り絞って書いた一冊であり、このあと続編の「城山」の第一章を書いた時点で旅立たれたとのことです。