乗車日記

自転車ときのこ

細川家の至宝展

朝一番で国立博物館に行ってきた。しばらく京都に住んでいるが、実は初めて行く。現在、通常展示は立て替え中で見れない。

 特別展は想像していたよりもずっと豊かで奥が深かった。9時半の開館とともに入ったのに、気がついたら2時。4時間半も経過していた。茶道具、能装束、鎧、刀、武将達の手紙、唐三彩、景徳鎮、青銅器、日本画、中国画、等々。
 まず最初の展示で思い出したが、幽斎の頃、細川家は龍勝寺城に10年ほどいた。展示してある江戸時代に書かれた地図を見ると、自分の家はその時の細川家の領地内に立っている。地名もそのまま。また地図には、まるまる坂や唐櫃越なども載っていて、ちょっと感動。
 茶道具では「利休しりふくら」という茶入れの色がよかった。最初は大したことは無いかと思ったが、光のあたり具合で深い紫が浮かび出る。できれば太陽光のもとで見てみたい。工芸品には螺鈿細工が結構多かった。室町期のものでも、虹色の光は全く衰えていない。色素ではなくて光学干渉色なので、材料の機械的な層状構造が崩れなければ大丈夫ということか。
 林又七の鐔(刀のつば)は白州正子が欲しがったという話を聞いていたが、これほど見事なものとは想像できていなかった。厚さ5ミリはある鉄板に、透かしで大変細かく美しい模様が入っている。最小加工寸法が0.1mmぐらい。切り抜かれた部分の側面は真垂直。どうやったら作れるのだろうか。
 能装束も、能面も間近で見るとまた違った印象。良い経験になった。唐三彩の獅子も大変よかった。裏に特異な模様のある戦国時代の青銅鏡「金銀錯狩猟文鏡」もこれまでに見たことも無い品で細かい線による描き込が強烈な印象だった。また初めて錦の御旗というものを見た。初代細川有頼が南北朝時代に朝廷から拝領したものとのこと。
 武将の手紙は全然読めない。幽斎の写した古今和歌集なども読めない。漢字は読めるのに、かなが全然駄目。漢文の方がまだ読める。日本語なのに読めないというのは情けない。崩し字をもっと勉強しなければ。読めないので、手紙は花押だけを見て楽しむ。光秀の花押はややこしくて再現不能。信長の花押は思いの外いい加減。信の字のイと言の間が少し離れていて、そこに長の上の部分が入り込んでいるだけ。これなら私でも書けそうだ。時期によって変わるらしいから、色々あるのかもしれないが。
 最後にお決まりの販売コーナー。いつもは図録など買わないが、今回出展されていない品も多数載っていたり、青銅鏡などは写真の方が模様が見やすかったりしたので、ついつい買ってしまう。2500円とえらく安かったが、これでは印刷代もでないのではないかと心配になってしまう。林又七の鐔を模したキーホルダーがあったのでちょっと食指が動いたが、見ると(当たり前だが)全く出来が違い、持っていると余計にイメージが崩れそうな気がして買うのはやめる。
 冷房でずいぶん体が冷えたので、新福彩館でラーメンを食べて帰る。仕事の予定が狂ってしまったが、十分その価値はあった。