乗車日記

自転車ときのこ

中国の歴史② 都市国家から中華へ 再読

中国の歴史シリーズの1巻を読んだので、十年以上前に読んだ2巻を読み直し。
そして思い出した、とても難しくて半分挫折していたことを。

何が難しいかというと自分の中に刷り込まれているものの見方が邪魔をする。

夏・殷・周・春秋・戦国と続く歴史はその前の新石器時代に育まれた幾つかの文化地域に根ざし、そこからの継続によって都市国家や領域国家が発展してきている。

これに対して下手に史記などを読んでいると、漢の武帝の時代の天下の範囲や王朝史観を元に綺麗に語られる論理が頭に焼き付いてしまって、それを元に前の時代の歴史を見てしまう。

春秋や左伝や公羊伝も戦国の諸国家が自分たちの出自を正当化するために後から編纂した書物であり、そのまま受け入れることはできない。

本書では、より古い竹簡文書や青銅器に鋳込まれた金文なども使いつつ、これらの資料から後代の考え方や、政治的操作がなされた部分を分析し、議論を進めている。じっくり読めば歴史学としての考証過程が良く分かって興味深く、かつ物の見方を鍛える上でも大変役立つが、斜め読みできる本ではない。

今回、1万年近い新石器時代における各地域の発展を理解した上でとりかかり、また史記を読んでから日が経ち、春秋時代を扱った小説群も頭から抜けてきた状態で読んだので、かなり理解できた。

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追伸:
気分が乗ってきたので、鹿ヶ谷の泉屋博古館に青銅器を見に行きました。自転車で45分。
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ここの青銅器コレクションは何度見ても素晴らしいです。中国以外では世界一のコレクションということですが、確かにそうなのだと思います。今回は色々勉強して時代による違いや用途の違いなども少し分かった上なので尚更です。また展示場も少し改良されて説明もわかり易くなっていました。
展示品の出土地が書いていないのは、古美術品として流通しているものを買い集めたからではないかと思いますが、類似の出土品から推定地域が述べられているものもあります。金文は拓本と活字にしたものそして日本語訳がついているので良く分かります。
展示の新しくなった部分として青銅器に文字を鋳込む技術の再現実験がありました。筆を使って泥で文字を書き、その出っ張りを鋳込んで凹んだ文字にするというのがうまく行ったそうです。この文字を鋳込む技術、殷が独占し、西周に移り、周が東遷するときにようやく諸侯に漏れ出たという秘密の技術。再現を試みているのは大変興味深いです。
もう一つ新しい発見。住友家(泉屋博古館は住友家の収集した美術品を展示するための施設です)が青銅器を集めた理由の一つが家業が精銅業だったこと。すぐに気がつきそうな物ですが、ここ二十年以上思い至っておりませんでした。少しすっきりしました。