乗車日記

自転車ときのこ

江戸の出版統制 読了。

天保の改革での統制に一枚絵の九色摺り以上は贅沢なので禁止というのがあった。七~八回摺りでも大変そうだけれど、そのくらいはまったく普通だったのだろうか。
文化元年の絵本太閤記絶版事件のきっかけが、賤ヶ岳七本槍の一人に入っている脇坂家からの苦情から始まっているというのが興味深かった。七本槍の中で唯一お家が残っている脇坂家は、当時譜代大名化を進めていて、外様出身という不都合な真実が改めて話題に出るのを嫌ったらしい。この後、天正以降の実名や紋などを出してはいけないという通達が出ている。現代と違って、戦国期の武士たちの子孫が治めている世の中なので、先祖のことが庶民の話題になることについて、かなり神経質になっていたようだ。
本書は、主に寛政期以降の江戸における本や絵についての議論だったが、それ以前の状況や、芝居や文楽の作品や、上方での状況なども総合的に知りたいと思った。