乗車日記

自転車ときのこ

ナポレオンの戦役読了

フランスの歴史小説家がナポレオンの主要な戦役について時代を追って記述した作品。あまり期待していなかったのだが、読みはじめるとあまりの臨場感に引き込まれた。アウステルリッツ辺りまでの戦闘においては、フランス歩兵の行軍スピードによって、相手が各個撃破される様子が非常によく描かれている。しかし時代が下るごとに、将軍達の行動力が落ちて精彩を欠いて行き、ワーテルローでは本人の能力というよりも、良い部下が残っていないために負ける様子が口惜しく描かれている。ベルティエがいないのでは無理がある。
 しかしフランス人ならではの思い入れが深いようで、一つでもサイコロが良い方向に転んでいれば大英帝国など存在していなかったというような意気込みだ。推薦文を書いているのがナポレオン研究所総裁。フランスにはそんなものがあるんですね。
 ナポレオニックは戦術級あるいは戦略級シミュレーションばかりやってきたので、作戦レベルのことには疎かったが、この本を読んで彼の才能は戦術でも戦略でもなく作戦の構想力にあることを強く感じた。そして、その構想を実際の命令書レベルに落として将軍達に伝達し、細部を調整するベルティエ参謀長がいてこそナポレオンの才能は結果に繋がっていたという印象を受けた。ベルティエについて書かれた本があるなら次は是非読んでみたい。