乗車日記

自転車ときのこ

反ナポレオン考 読了

そこそこの分量のある本でしたが、非常に読みやすく、あっという間に読み終えてしまいました。ナポレオンの才能、性格に焦点を当て、様々な同時代人の評や資料を使いながら多様な切り口から論じている。編年体ではなく、王党派、旧怨、宗門紛争、兵士といったテーマごとに章があるが、読んでいくとブリュメールのクーデーターから始まって、セントヘレナでの死までが自然に辿れる構成になっている。ナポレオンだけでなく周辺の人物達についても論じており、特にタレーランフーシェについては、一章ずつが使われている。これらを通じて、そう簡単には掴みきれない、ナポレオンの明と暗、大きな振幅を知ることができた。それにしても100万人を優に超える戦死者を出してまで自分の野心を押し進め、何とも思わないという神経は普通ではない。

その他、自分としては、ローマ法王と聖職叙任権でもめて、教会を敵に回して大変なことになっていたことは知らなかったので驚いた。フランス革命を経てもまだまだ教会の力は強かったと言うことか。また、皇帝就任等の国民投票は賛成300万票、反対1500票といいつつ、実際は賛成150万票でその上600万票は棄権だったとのこと。

それと、スペインでの非対称戦争、パリでの数々の爆弾テロ事件といい、あまりに現代的とも言える陰惨な暴力の応酬は、フランス革命ナポレオン戦争によって目覚め始めた民族主義国民国家というものが、生まれながらにして正の側面と負の側面を併せ持っていることを示唆しているのではないかと改めて感じた。

f:id:tasano-kona:20150215171239j:plain