21世紀になってから光学顕微鏡で見えるほど大きく、ゲノムサイズがマイコプラズマのような細菌よりもずっと大きい、驚くべきウイルスが何種類も発見されているらしい。
普通のウイルスは宿主の細胞の機能を利用して自分を複製することを前提に、少ない遺伝子しかもっていないのだけれど、巨大ウイルスはタンパク質を作るのに必要な、アミノ酸をもってくるtRNAや、そのtRNAにアミノ酸をくっつける酵素などの色々な遺伝子をもっているらしい。ただし、タンパク質合成の主役の酵素であるリボソームの遺伝子はないとのこと。
また、これらとは別種のウイルスらしからぬ壺のような形をしたカプシドのない巨大ウイルスも発見さているとのこと。(普通のウイルスはカプシドと呼ばれる正二十面体形状のタンパク質の殻をもっている。)
こういう変な奴らが、未だに発見されていなかったというのが驚きで、生命の世界の深さを感じる。また作者の仮説によると、現在の生命の細胞のような複雑な機能がいきなりできるわけはないので、もしかしたらこのような巨大ウイルスは細胞ができる前の生命の姿を色濃く残しているのかもしれないということだ。とても面白いので、今後の研究の進展が楽しみだ。
また、今回この本を読むにあたって、DNA複製やRNAへの転写やタンパク質合成の細かいところを忘れていたので、ついでに細胞生物学の本の該当部分を読み直した。これもまた楽しいので、時間があれば全部読み直したいところだ。