乗車日記

自転車ときのこ

天才数学者はこう解いた、こう生きた

バビロニア時代から19世紀のガロアあたりまでの方程式の歴史を辿った本。放送大学の「数学の歴史」を見てから読んだからか、大変わかりやすかった。
ギリシャ時代は全てを図形に帰着させようとして、3次元以上への展開ができなかったり、エジプト人はなんとか分の1しか使えなかったり、と数学というのもかなり記述法に囚われて思考が限定されているのが意外だった。ギリシャの作図解法やエジプトの分数和表現それぞれは超絶的に凄いのだが、限界を自分で作ってしまっているような感じだ。
アル フアーリズミによって発見された方程式の概念は、当時の記述方は自然言語で書き下していくもので、「ものの2乗にある数とものをかけて足した時に別のある数になるとき、ものはある数を2で割ったものにある数の二乗を4で割りそこから別のある数を引きその2乗根を撮ったものを足して得られる値になる」とか大概面倒臭い。現在使われているようなデカルトの記号表現の有り難みは普段感じることはないが、こうしてみると素晴らしいことがわかる。
特に面白かったのは対称性と方程式の解の公式の話。タルターリァ・カルダノの3次方程式の解の公式はガリガリやって解いたという感じだ。しかし、ラグランジュからガロアにかけての、方程式の係数の四則演算で表されるのが解を組み合わせてできる対称式であり、その対称性を冪根を使って崩して行って対称性がなくなったところで解に至るという説明は大変明快だ。ガロア群論を使った(というかこの過程で群論を見出した)5次方程式の解の公式が四則演算と冪根では作れないことの証明がこれまた痺れるものだった。
あと、ガロアの決闘死が実は偽装自殺で、自殺願望のあったガロアが革命の起爆剤になるべく仲間と仕組んだものだったという説は興味深かった。ガロア群論あたりはもう少し詳しく読んで見たい。
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