乗車日記

自転車ときのこ

バルチック艦隊の潰滅 読了

いつ購入したのかも忘れるぐらい長らく積んであったが、先日読んだ「日本海海戦の深層」に刺激されて読みたくなった。日本海海戦を戦艦オリョール号の乗組員として体験し、捕虜となって生き残った著者が、熊本での捕虜生活中に他の艦の乗組員から情報を集めたが、革命前のロシア社会の混乱の中でそれが行方不明になり、25年後に偶然見つかったことで執筆が可能になったという書物。ちなみに昭和8年出版で、私が入手した本も、昭和47年新装第一刷、昭和52年第12刷だけれど、訳は戦前のもののようだ(ただし旧漢字ではない)。
全550ページのうち、半分が対馬海峡に至るまでの旅、そして残り半分で海戦の様子、各艦の運命が、本当に各艦ごとに最後まで詳細に記述してある。ただし乗組員が一人も生き残らなかった艦を除く。
その後半はともかく悲惨。全てが装甲板に守られているわけでもなく、また守られていたとしても、30センチ砲の下瀬火薬入り榴弾は、艦上構造物と人間をぐちゃぐちゃにしていく。また浸水の恐怖や、どこにも逃げ場所がないと言った恐怖は、海軍特有のものなのだと思う。「戦艦大和ノ最期」も読んでいて暗澹としたが、こちらはほぼ全艦隊が潰滅だから、延々と続いて辛い。
敗戦の原因がすべて帝政ロシアの社会構造と階級対立に帰せられているのは半分は真実なのだと思うが、まったく書いてある通りだとすると、あまりに出鱈目な組織で海軍が動いているということになり、その辺りは少しは割り引いて読む必要もありそうだ。
ところで、当時のロシア人はかなりの酒好きだったようだ。戦闘中の昼食に酒が出るし、降伏した艦の乗組員はすぐさま飲み始める。これには少し驚いた。