乗車日記

自転車ときのこ

読了 黄金郷伝説 読了

ヨーロッパ人によるアメリカ大陸の発見から話は始まるが、本書の焦点はベネズエラと英領ギニア(今のガイアナ、1966年独立)の間にあるグアヤナ地方あるいはギアナ高地をめぐる500年の歴史。(とはいってもベネズエラとか英領ギニアとかは後でできたもの。)

ヨーロッパ人がやってきた後の南北アメリカ大陸の歴史は色々と読んできたが、一地方に集中してその歴史を邂逅から現代に至るまで俯瞰的に記述したものはあまりない。その点が非常に新鮮であり、特徴的である。また、著者は今世紀初頭に三年間ほどベネズエラで暮らした経験をお持ちで、現地の視点も取り入れた検討がなされている点も本書の特徴と言える。(長らく積読していたが、本書の発刊は2008年。)

黄金が争奪の主目的となる前には、ベネズエラの真珠がスペイン人の進出意欲を支えていたという指摘も、これまであまり聞いたことがなく新鮮だった。
まtが特に興味深かったのは19世紀になってからの領土紛争。国際法という名前のヨーロッパ人の勝手な理屈が生々しく現れる。精密測量して地図を作ったら、誰が住んでいようとその土地は測量した国の領土になり、山の頂点を極めたらその山系は登った人の国家が領有権を取得できる。これに対応するベネズエラの政権がまた酷くて、呆れ返る。

これまで自分の中で、ギアナと英国の関係というのは、ドイルの失われた世界ぐらいしか印象がなかったが、16世紀のエリザベス1世の臣下のウォルターローリ卿に始まる長い関与があること知った。そしてあのロビンソンクルーソーの物語が、ギアナ植民のためのパンプレットであったことも。これはそういう視点でもう一度読み返してみたい。

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