乗車日記

自転車ときのこ

キノコとカビの研究史人が菌類を知るまで読了

1976年出版のIntroduction to the history of Mycologyの翻訳本。きのこ学会のツイッターで宣伝していたので買ってしまったが、素人にはちょっと重い本だった。
 ローマ時代以来、暫く絶えていたきのこの研究が16世紀ごろになって再開され始め、紆余曲折を経て菌類というものが明らかにされていく過程と病原性や利用方法、分布分類法などが網羅的に記述されている。
 カビが胞子から発生することが最終的に受け入れられたのが19世紀の半ばだったということがまず驚きだった。胞子から発生させるという実験が人によってはうまくいったり、ある人は胞子を使わなくてもカビが発生したりしたので、自然発生説が長く残ったらしい。カビは目に見えやすいが、胞子は小さいので状況は細菌と似たようなものだったのだろう。
 実用的な面では植物に対する病原性という点から研究が17世紀ごろから行われており、小麦や葡萄やじゃがいもの被害を食い止めたいという強いモーチベーションから菌学が進歩してきたということを知った。また19世紀初頭には大型の木造船の腐朽が大きな問題になり、にわかに菌類学者が政府に招聘されたりもしたらしい。そのころサルノコシカケのようなきのこが船に沢山生えたりしたらしい。
 いろいろ書いてあったが、特に面白かったのはペニシリンの発見がいくつもの偶然の重なりのおかげという話。こういう偶然を見過ごさないように、感性を研ぎ澄ましたいものだ。
 いずれにせよ、背景知識のない状態で歴史的な紆余曲折を読むと余計にわけが分からなくなるところがあるので、次は基礎知識が体系的に書かれた本を読んでみたい。それに顕微鏡を購入して菌を直接見てみたいものだ。