乗車日記

自転車ときのこ

江戸に学ぶエコ生活術読了

米国人の日本建築の研究者が米国で江戸時代の生活を紹介するために書いた本の日本語訳。鎖国状態でサステイナブルな社会を築いていた時代のシステムが江戸後期の関東近郊を旅する形で概観されている。農村、森林、交通、輸送、商家、裏長屋、武家屋敷、水道、糞尿処理、等々のシステム全体が相互の関連に重きを置いて説明されており、全体像を再認識するのに役だった。
 日本人だと農家の屋根は主に茅でふいていたとか、畳は藁と藺草から出来ているだとか、土間や縁側というものがあるとかは、当たり前過ぎてわざわざ書き難いところだが、全体的なシステムの一部としてきちんと説明してある。また、悪いところは忘れて、良いところだけを紹介している訳だが、これもまた外国人でないと、やり難いところなのかも知れない。外国の良いところを紹介するという立場ならそれも許される。
 欠落していた知識を得ることも出来た。リサイクルが徹底していたことは知っていたが、普段使いの皿や碗まで接着修理する職人がいたというのは知らなかった。また江戸の武家屋敷で野菜を作っていたのは知っていたが、江戸全体の面積の50%もが畑だったとは知らなかった。
 現代の日本に残る江戸の心も紹介されている。洗濯機の給水ポンプは、江戸時代の人が水を大切に使っていた名残だろうと観察している。そして一番いいたいことは「足るを知る」とのこと。原題もJust Enough。米国に紹介してもらえるのは有り難いが、自分はそれに恥じない生き方は出来ていない。