乗車日記

自転車ときのこ

弓矢と刀剣 読了

 筆者は武具の殺傷道具としての機能や使われ方をハード面から考察しつつ、絵巻物および文献資料を交えつつ中世の戦闘を考察している。前半は鎧や弓や刀のパーツや構成の細かなところを大変くわしく解説してあり、また絵巻物での戦闘の描かれ方と武具の造りとを関連させた説明も大変分かりやすい。文献資料を基に騎馬状態で弓矢を使う戦闘から刀による白兵戦に時代とともに移っていく様子の考察については、引用されている各戦闘例が全体の中でどの程度の割合なのか自分には分かりにくく、実感が掴みにくかった。素人の考えではあるが、各時代ごと、戦闘ごとに区分して何割がどういう戦いをしているかといった定量的な分析も欲しいと思う。
 武具は現代では美術品として鑑賞される対象ではあるが元来は殺傷の道具であるので、歴史的価値も道具としての役割を本に評価する部分も必要であり、さもないと観賞価値に乏しいものは失われてしまう危険性があるという筆者の考えには全く同意できる。
 それから本文中で反論の対象として「源平合戦の虚像を剥ぐ」および「武士とは何だろうか」という2冊の本がでてきたが、これらの本を10年以上前に読んだことがあったので驚いた。「弓矢と刀剣」の第一刷が1997年なので、そのころに色々と議論があったのだろう。とすると、もう少し最新の本を読む必要があるという気きがしてきた。