乗車日記

自転車ときのこ

道が語る日本古代史 読了

古代の道の発掘成果を律令制度の全体像と絡めつつ総合的に解説している。国家を支えるソフトウェアだけを議論するのでなく、実際に支配を及ぼすためのハードウェアも含めて議論していくというこの本の主題は大変納得のいくもので、内容も分かりやすかった。
 個別の部分では律令国家が作った幅広の直線道路のことが一番興味深かった。自分はこれまでに持っていた断片的な情報から、壮大な直線道路は一部分だけのものかと想像していたが、どうも全国的に構築されていたようだ。発掘の結果、山陽道や東海道でかなりの規模の遺跡が見つかっている。このような道路は国家の力を見せつけるために谷でも湿地でも無理やりに工事をして直線にしたので、メンテナンスに非常な労力を要したようで、9世紀にいたって尾根を基本とした曲がりくねってはいるが、よりメンテナンスを要しないものに作り変えられたというのが大変興味深い。現代のインフラも建設費用ばかりでなく、長い眼で見た維持費用を考慮したうえで整えていくべきだろう思う。それから、律令国家の都が平安京に落ち着くまでの間、都を変えるたびに道路も作り直されていたというのも興味深かった。
 あと、全然関係ないが、古代の道路の建設方法はトレイルのメンテに応用できそうな気がする。