読了。史記で言うと本紀に当たるところと、皇后伝、董卓、袁紹伝。
著者の陳寿の記述は簡潔でなかなか行間を読み取れない。でも、よくよく読むと「劉備が袁紹のもとに逃亡し、関羽は降伏した」とか「顔良が攻めてきたので張遼と関羽を先陣として撃破し、顔良を斬った」とか書いてある。ここから三国志演義の胸躍るドラマを作り出せるのは驚くべきこと。逆に、演義の呂布が矛の紐を遠くから射抜いた話は脚色かと思っていたら、正史にも書いてあってこれも驚いた。
いずれにせよ、紀伝体の史書は登場人物全員の記述を読んで繋ぎ合わせないと、全体像が見えてこないので素人にはしんどい所がある。この本も三国志演義を読んでいなければさっぱり分からなかったろうし、史記にしても項羽と劉邦を読んでいないと厳しかったと思う。でも、全体像が分かった上で読むと、個々人の性格や考えや信念がわかって大変面白い。
話は外れるけれど、曹操の曾孫の代、魏の景初四年、西暦で言うと243年に倭国の女王の卑弥呼が使者を派遣してきたという記述があった。諸葛亮が五丈原で死んだのが234年だからほぼ同時代。急にお話の世界と現実世界が繋がって、目が覚める思いがした。
後書きに記してあった著者の陳寿の微妙な立場(もと蜀の臣で、魏の後継の晋の官吏として三国志を書いた)や、註釈者の裴松之の役割の重要性なども大変有用だった。是非残りの巻も読んでいきたいが、八巻まであるらしい。まあ史記も八巻あったしそんなものかな。