乗車日記

自転車ときのこ

僧侶と海商たちの東シナ海 読了

円仁の入唐求法巡礼行記を読んだときにも感じたが、民間商船の方が遣唐使船より安全で便も多い。どういう事なんだろうと思っているときにこの本を見つけた。明代から清初の貿易商人や倭寇についての本は割と多いと思うが、平安時代から元代の民間交流について書かれた本は初めて見つけた。

そもそも民間の商人はいちいち記録を残したりしないので、交流の実態は見えにくい。しかし留学や旅行で東シナ海を渡った僧侶は自ら記録を残していることも多く、また寺院の記録に残っていたりするし、割と常に交流が行われているので、これを使えば交流史を具体的に捉えることができるというのが著者の着目点。特に仏教史に興味があったわけでなく、そもそも仏教関係の文献を読むのは最初は嫌だったとか。

民間船が行き来しているので、密航して中国に行くのは割と簡単なのだけれど、向こうでの扱いが朝廷の許可状があるかどうかで異なり、また平安時代に関しては、帰国後に留学の実績をもとに日本仏教界で活躍するには、やはり朝廷の許可を得た上で留学しないと意味がなかったというのが面白い。それとは別に向こうに骨を埋めるつもりの人は、許可など気にしなかったというのも興味深い。

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