幕末関連ということで続いて氷川清話。寡聞にして吉本襄という人が収集・リライトしたものとは知らず、勝海舟が自分で書いたと思っていた。解題によると、吉本氏はずいぶん元の談話の中身を書き換えたらしく、講談社板の編者の江藤氏、松浦氏は復元に苦労されたようだ。
しかし、解題にも書かれていたとおり、吉本氏が口語調にリライトしてくれたおかげで、読むのは随分楽だった。内容も元の真意を復元していただいているので安心して読める。
咸臨丸や海軍操練所や江戸開城時の西郷との談判などのエピソードはどこかで聞いたことがあるものだったが、聞いたこともない話も多数あって面白かった。
また自分にはあまり馴染みのない関東の歴史が身近なものとして語られているのを見ると、幕臣というのの在り方が少し見えてくる。
皮肉もなかなか強烈で、幕府はおふれをだすときにできるだけわかりやすい文字を使ったが、明治憲法は文字が一般人に読めないので世論は黙っているだろうと言っている。もう一つ面白かったのが、咸臨丸でアメリカに行って帰ってきた際に、老中からアメリカについて何か気がついたことがあるだろうと再三問われて答えた返事。「アメリカでは人の上に立つものは地位相応に切れものです。これだけは我が国と違います。」だそうだ。半分作り話なのかもしれないが、なかなか凄い。