乗車日記

自転車ときのこ

アレクサンドリア

家族がいない時にしか出来ないことをしようと思って、たこ焼きの後ちょっと昼寝をしてから映画のレイトショーに行ってきた。
 ローマのパラダイムがキリスト教のパラダイムに転換しつつあった4世紀末から5世紀始めにアレクサンドリアで天文学、数学を研究し教えていた女性の哲学者ヒュパティアがキリスト教徒に虐殺された事件を題材とした映画。
 ある意味必ず宗教につきまとう他者に対する不寛容性。信じることに絶対の基礎をおく一神教のパラダイム。理性に基礎をおきつつも様々な矛盾を抱えるローマのパラダイムの限界。理性的であろうとしたためにキリスト教を冒涜したと糾弾され、虐殺されたヒュパティア。そして古代の英知を蓄えたアレクサンドリア図書館の消滅。科学に携わるものとして、様々なことをもう一度考え直させられる映画だった。スペイン映画とのことだが、以前に見たスペイン映画も宗教対立と不寛容がテーマだった。レコンキスタの国だけに思うところのある人が多いのだろうか。
 自分にとってヒュパティアのことはローマ帝国衰亡史の前半の中で最も印象に残る話であったし、先日読んだバウドリーノにも出てきたのでタイムリーな映画だった。セットは現代の映画だけあって素晴らしく、ローマ世界を堪能できる。ただし話は全く救われない。それでも史実はもっと酷いので、これでも映画化に際しては配慮をしたのだろう。もしかするとバウドリーノのヒュパティアの話はウンベルト・エーコの彼女に対する鎮魂の試みなのかも知れない。