乗車日記

自転車ときのこ

仏独共同通史 第一次世界大戦上 読了

 

 

これまでに両国で尽くされてきた議論を知っているのが前提の書き方なので、ついて行くのが少し難しい。上巻は主に、両国国民が普仏戦争から一時大戦勃発に至るまで、そしてその後も含めてお互いをどう見てきたかが主に分析されている。

 印象的だったのが、自国が戦場となったフランスでは、大戦中にドイツ人種そのものに対する蔑視、憎悪が育っていったのに対して、ドイツではそのようなことは無かったという点。ドイツの怒りはむしろイギリスに向けられていたようだ。

 大戦勃発に至る過程に関しては、一つの問題点として、政治の決定が軍事技術に依存してしまっていたということが大きいという論旨だった。ロシアの動員展開速度の遅さを前提としてフランスを迅速に屈服させるというシュリーフェンプランを用いれば勝利の可能性が高いが故に、ドイツにとってはロシアが動員の気配を見せればすぐさま宣戦布告を行う必要があり、これが開戦の閾値を下げるというか、むしろ信号を増幅している。軍事計画が政治判断より上位にある。クラウゼビッツの「戦争は政治の延長である」という理論が逆説的に思い起こされるが、やはりこれはそうあって欲しい、あるべきだという理想であると言うことが印象づけられる。

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