乗車日記

自転車ときのこ

馬の世界史 読了

今では忘れられているけれど、動力機械が生まれるまでは、馬は動力の大きな部分を担う存在であり、馬無しでは人の社会はこれほど発展し得なかった。そんな思いで綴られた、馬を中心とした世界史。
 草原の騎馬民族史を知りたいのであれば杉山正明先生の本の方が詳しいですが、この本では歴史時代以前から現代に至るまでの馬と人の関わりが総合的に記述されています。そのなかでも圧巻は、常にどんな馬か、つまりどのような種で、どのように品種が作られてきて、どのような体格で、どのような性質か、そういった事が、各時代、各勢力毎に述べられていることです。馬を心から愛し、かつ歴史学者でないと書けないという希有な本だと思います。
 それから私にとっては、ルネサンス以降の獣医学や馬種改良や、乗馬技術の発展史がとても新鮮でした。また、イスラーム世界の拡大の核を担ったベドウィン達がいかに馬の品種改良に力を入れていたかなども。これらは、これまで触れたことがない分野だったので驚きばかりです。競馬のことも全然知らなかったのですが、その面白さに少しだけですが触れることが出来ました。
 実は裏の説明とプロローグを読んだときは、動力機械誕生以前の世界における馬の総動力数とか、人間と馬との食料生産用土地の競合とか、そういった定量的な分析があるものと想像していましたが、これは少し思い違いでした。そういうテーマを掘り下げた本も読んでみたいのですが、どうやって探すか。これほど検索エンジンが発達しても、キーワードでくくれないものの検索は結構大変です。
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