1月20日に出たばかりの本。これは積んでおくと意味がなくなりそうなので、早速読んだ。イスラーム国の台頭には、9.11以来の来歴があることが理解できた。人工国境線と宗派争いと、アラブの春による独裁国家の急激な衰退による統治の空白空間、それにクルド問題等々が絡んだ下地があって、イラク北部とシリア北部のスンニ派地帯がその支配下に入ったということで、簡単に解決できる問題ではないようだ。
それと自分も薄々感じていたが、彼らはイスラーム教勃興時の征服行の再来をイメージした宣伝戦略を取っているとのこと。イスラーム国が奴隷制度のような現代の国際社会の規範に逸脱する結論を、イスラーム教の啓典や教典から引き出していることについて、これを正面から反駁できるようなイスラーム法学者が出てくるべきだという意見には非常に納得できる。
アメリカ合衆国の中東におけるプレゼンスの低下に関しては、オバマ政権としての意思の問題だけでなく、シェールガス増産による中東の石油への依存度の低下によって、そもそも中東の安定を必要としなくなってきていることも関係していると私は思うが、その辺りについては議論されていなかった。
アメリカのプレゼンス低下の中での、事態収拾の選択肢としてはイラン、トルコの勢力圏拡張によるもの、ついではそこにサウジアラビア、エジプトが加わるという見解。イランはそうなのかなと思っていたが、意外にトルコもイラク戦争以来事実上の勢力範囲を広げているらしい。
池内先生はもっと詳しい本をこれから出版されると言うことなので、是非読んでみたい。