乗車日記

自転車ときのこ

読了、言語の本質

オノマトペが記号接地の端緒となっているというのが非常に納得できる。発音の時の振動の様子、口の動かし方、音そのものなどに対象と同じ要素が含まれていて、通常の言葉と違って直接の対応関係がある。その発想はこれまで自分になかった。ただし、オノマトペは記号と物事の間に関係を設定できるということに赤ちゃんを気づかせることに意義があり、それに気づいてしまえば物事と類似性のない言葉を使っても世界を写し取れることになる。また、英語でオノマトペが少ないのは、それらが動詞化して通常の言葉に取り込まれているからという説明も非常にわかりやすい。英語ではそろりと歩くとか、のんびり歩くとかがいちいち別の動詞としてあるらしい。日本語でも吹くとか、吸うとか、はたまた、はたらく、もオノマトペが通常の言葉に取り込まれたものらしい。
後半の、なぜ人だけが言語を持つかという部分はまだ発展途上な感じだが興味深い。記号接地されていないAIが幅を利かせつつある現代であればこそ、一読の価値がある本だと思う。個人的には、記号接地は物事と記号の間に関係があることを気づかせるという点が大きい気がするので、その前提でAIがWord2Vecの高次元ベクトルで用語間の複雑な関係を表現・学習すれば別に記号接地がなくても良い気がする。前世紀にそれができなかったのは、少数の特性要素で単語間の関係を表現しようとしたことに無理があったのではないだろうか。