乗車日記

自転車ときのこ

武士の成長と院政 読了

講談社の日本の歴史の第7巻。ぼちぼちと歴史書も読んで、また軍記物を延々と読んでも武士とは何者かというのが未だにはっきり分からない。それで手に取った一冊。これまで読んだ歴史書と違ってシステム面からの考察に重きが置かれているのが大変新鮮だった。律令の軍団制から、王朝時代の追捕使を派遣して地方武士を集めることによる軍事力行使への変化。900年頃まで続いた俘囚の内国移配と、騎馬戦闘の伝播の関係。前九年・後三年の合戦における血みどろの争いを共体験したことによる、源氏の強固な結束と、殆ど戦を経ることなく源氏への対抗馬として白川院らによって持ち上げられた平氏との力の違いの議論。等々、大変興味深い内容だった。
 ただ、私自身が具体的にこの時代の制度を理解できていないので、せっかくの議論を完全に理解できていないのが残念だ。荘園、国衙、受領、領主等々、言葉は知っていても実のところよく分かっていない。そもそも、だれが田んぼを耕して、それをだれが集めて、どこにどのような配分で上納されて、そのような制度を支える秩序意識と強制力はどこにあって、、、よく分からない。奈良時代まで遡ってもう少し勉強し直そうと思う。
 その代わり、王朝時代の天皇や院や関白や参議達がなんの仕事をしていたのか、というのはある程度イメージが持てた。平将門藤原純友の反乱に対する対応や、園城寺戒壇問題、全国の荘園整理の裁定等々、閣議の様子が少し分かった。
 こうしていると、前に読んだ「古代ローマ人の24時間」
http://tasano.hatenablog.com/entry/20120709/p4
のように普段の生活を時系列で示してくれる本があると有り難いなと思った。公家の日記というものはあるけれど、朝から晩までのライフログになっているわけではない。平安時代の人が書いた政治小説というのがあると面白いのですが。
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ところで、もしかしたら、今から1000年後ぐらいの人は、データセンターの廃墟からブログやツイッターライフログなど取り出して解析して、古代人の考え方などを再現したりするのでしょうか。