乗車日記

自転車ときのこ

読了、南柯紀行

南柯紀行だけ読了。前半は大鳥圭介が幕府歩兵隊と脱走し、箱館戦争が終わるまでの日々の行動を記述した手記。解説にあるように明治三十年ごろに、何らかのメモをもとに大鳥圭介が書いて「旧幕府」という雑誌に掲載したもの。後半は、箱館戦争後に東京の牢に入れられている時の日記。明治五年まで牢に入れられていたが、日記は明治三年の六月まで。
母成峠の戦いの辺り、大山柏の戊辰役戦史とは結構違う。それだけでも読む価値があった。
大鳥の方も、全部本当のことは書いていないのだろう。明治元年の十一月の函館派遣のイギリスおよびフランス軍艦艦長による蝦夷島の「デファクト」政府認定という情報だけを記して、逆賊ではないと主張している。しかし、それが現地派遣組の先走りであって、各国公使が協議した結果、十二月末に交戦団体とは認定出来ないことに、各国の局外中立解除、ストーンウォール号(甲鉄)のアメリカから新政府側への引き渡しとなったことは書いていない。
事実がどうあれ、何年も経つと結局書いたことが本当になってしまいかねないという恐ろしさが感じられる。

これとは別に、前半の手記からは全体的に指揮官に入ってくる情報が少なく、当時の通信手段のもとでは、全体を俯瞰した指揮などは全く出来なかったことがよく分かる。
獄中日記の方は、牢屋内で精神を健全に保つために将棋をしたり、勉強をしたりする様子が流石だと思った。それと、明治三年一月の新聞には、元会津藩家臣団に北海道の四郡(斗南では無くて)が与えられるという記事が出ていたそうで、それが引用されている。具体的に尻別とか書いてあるので、全くの誤報でもなさそうだ。その時はそういうことで話が進んでいたのだろうか?これはもう少し調べてみたい。

それにしてもこの本、購入したいところですが古本市場では1万円以上の値段がついています。読むまで、内容も不明でしたので図書館で借りました。でもゆくゆくは資料として手元に置いておきたいところです。