乗車日記

自転車ときのこ

ソ連史 読了

ロシア革命からゴルバチョフによる連邦解体までを一通り記述してある。これまで断片的な時代ごとの知識しか持っていなかったので、一通りの流れを掴み直すのに役立った。しかし、この薄さでは仕方が無いが、政治史が中心で、経済に関する定量的な議論があまりないのが残念。折角の計画経済の実験なのだから、定量データでその状況を分析して欲しかった。
それにしても知らなかったことが多い。スターリン時代の大飢餓のことは知っていたが、それが食料輸出によって重工業に必要な資材を購入するために、強制的に食料を集めたためということを始めて知った。これは酷い。食料生産計画の失敗によるものだと思っていた。酷いが、工場を作っておかなければ独軍に負けていただろう。また集団農場が形式的には自発的に集まった農民の任意組合ということになっていた(実際は強制的に発案させられたらしいが)ということも知らなかった。そこそこ経済が安定して、て来た70年代以降、見た目だけ働いていれば給料がもらえる、真面目に働く人がいなくなっていったというのは恐ろしい。何時間も行列しなければ物が買えないので、仕事中に抜け出して買いに行くのがあたりまえだったらしい。さらに恐ろしいのは、計画された生産量のノルマを満たすことだけが、組織の目標となったので、品質は全く無視されたという点。やはり価格という情報によるフィードバックは重要だ。
そもそも品目が10個ぐらいならともかく、何万種類にも渡る物品があり、かつ資材投入から出来上がるまでの時間遅れがある状況で需給調整の最適解を出すことは、不確定要素を度外視したとしても、現代のスーパーコンピューターでも難しいと思う。せいぜいがプラントの最適化まででは・・・。やはり、個別部分における価格による自立的フィードバックに、システムが不安定化しないように調整する全体的視野によるフィードバックをかけるのが妥当なところではないだろうか。現代では経済が国を超えてつながりすぎ、かつスピードが速くなりすぎて、全体的フィードバックがかけにくくなっている気もするが。
それはともかく、政治的選択肢が限られている中で、新聞や政治家への投書、手紙という物が大きな位置を閉めていたというのは新鮮だった。指導部はかなり敏感にこれらの声を気にしていたらしい。一党独裁ということは、すべてが党のせいであるということにもなる。中国の指導部がかなり世論を気にしているように見えるのも同様の状況なのだろうと思う。